【我輩は旅する猫である】咲かないアーティストの話

【我輩は旅する猫である】咲かないアーティストの話

旅の最中に出逢った人と深い話をするのが、私は一番好きだ。
一番好きというか、そういう話をできる人としか私はきっと仲良くやれない。

目を見てちゃんと話せる人。
人の言葉や何かの受け入りでそれらしい言葉を並べるのではなく、自分の心の中から言葉を発する人。
どんなに容姿が綺麗だろうが、社会的に成功してようが関係なく、謙虚な人。
人間みんな色んな問題を抱えながら生きているけど、前向きに立ち向かう強さをちゃんと持ってる人。

本当に素敵な人は、そういう人なんじゃないかな。

これまでの移動距離に比例して、私はそれなりに多くの人間を見させてもらった。
もちろん、旅中に一番よく見ているのは、自分自身だけど。

ふっと最近、私はけっこう他人の心にグイグイ食い込んで話ができてきたことを不思議に思った。
出逢ったばかりにも関わらず、涙付きで重たいところまで打ち明けられることも多々あった。
打ち明けてきた当の本人も、「愛はなんか喋りやすいから」としか言ってくれなかった。

ちょうどこの間、ラスベガスでお世話になったのりさんと会う機会があったので、なんでそんなに重たい話を打ち明けてくれるのかを聞いてみた。

「愛ちゃんとは利害関係とかないからね、だからなんでも話せるんだと思う。社会で特につながってないじゃん?」

縦社会、エリート企業で働くのりさんが教えてくれた答えが、今日なんとなく消化できた。

なるほど。確かにな。

私は一応人間だけど、そうだね、社会人ではないのかもしれない。

我輩は旅する猫なのである。

私はきっと、これからもこんな感じで、猫目線ならぬ、ちょっと社会から離れた眼点で物事や人間、そして自分という生き者を消化して行こう。なんだかそれって、きっとおもしろいかもしれない。

これを愛旅の別コラムにしていければいいなってフッと思ったり。

【我輩は旅する猫である】

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不器用すぎる。日を見ることがない観葉植物アーティスト

今日は、おっちゃんに預かってた鍵を返す為に、雑司が谷のオフィスまで行ってきた。

「寄せ植え見に来ない?」と謎のメールが入っていたこともあり、また絶対話長くなるやつやと気乗りしない状態で行ったというのが本音。

途中道端であった猫ちゃん。神主にゃん?すんごいたくさん鈴を付けてるね。

おっちゃん来たよ〜!鍵ありがとう。
おっちゃん
はい〜!こっちこっち!

前にも書いたけど、おっちゃんはここでもう30年、土木会社を経営している。

ブログに書くのはOKと言ってくれたけど、あちこちに資料やら書籍やら報告書やらが鬼のように山積み&散乱してて、どこからどこまでが載せていい範囲なのかわかんなかったから、作業場の写真は撮らなかった。

おっちゃん、ここ数日もオフィスに泊まり込んで仕事漬けだったみたい。
人手が全然足りていなくて、良い人材が入ってきても定着しないから、結局おっちゃんが自分でやらなくちゃいけない。
もう70歳超えてるんだよ?冗談抜きで、ベンチャー企業に勤めてる人より働いてる。

おっちゃんは、仕事と趣味の境目が見えないほど、この仕事を愛してる。
でもね、ぶっちゃけ会社は全然儲かってないの。
「整理」「効率よく」「落ち着く」という言葉を知らずに、いっきに物事を進めるおっちゃんは、いろんな無駄が多すぎるんだと見ててわかる。

一通りどんな作業なのか(私が遠隔で手伝えることがあったらって意味もあって)見せてもらったんだけど、、、
どんなけ集中して勉強したとしても、3年は必要だなって感じだった。
測量とか設計とかCADとか、私にすぐにどうこう手伝える内容ではなかった。

おっちゃん、聞いちゃうけど、死んだらここどうするの?
おっちゃん
・・・・・。

このまま、“◯◯資料館”と名付けて、小さな名所にできそうなぐらい年期の入ったオフィスを見て、自然と湧いた質問だった。

誰かに譲るの?ちゃんとそういう人いる?
おっちゃん
う〜ん。いない。今は
おっちゃん死んだらさ、これ全部なくなるってこと…?
おっちゃん
うん。死んだあとのことは考えない!笑)
死んでしまったらなんにもできないもんね、持ってけないし。

おっちゃんの事務所にあるもののほとんどが、おっちゃんにとっては絶対捨てられない宝物なんだろうなっと思っての質問だったが、わかりきった事を聞いてしまったとも思った。

おっちゃん
それよりこっちこっち!これ見てください。

おっちゃんのマシンガントークはいっつもこんな感じ。
とにかく喋りたくて聞いてほしくて見せたくて仕方ないのだ。
「人の話を聞く」「会話をキャッチボールする」ということが、ほっとくと一切できない。

そんなおっちゃんは、実験に近い工作やちょっとした発明が大好きな人。
これまでその小さな発明の特許を取ってきたけど、それがビジネスに繋がることは一度もなかった。

身近にあるもの、例えばプラスチックや文房具、海岸で拾ってきたものなんかに熱や他の素材を足して改造し、おっちゃんの論理的なセンスを添える。

その作品に、自分で繁殖させた何種類かの植物を寄せ植えし、これまで100種類以上作ってきたそうだ。
置ききれなくなって、箱になおしてしまったものも多いんだけど、いくつか紹介するね。

【目覚まし時計】砂と水が中に入っているのに、裏のネジをまわせばちゃんとまだ時計の針が動くというのがポイントだそう。

【タイムカード】壊れたタイムカードを分解して寄せ植えにしたもの。貝殻がところどころに付いている。

【なにがあったんだ】とにかくあった物を寄せあつめた(裏に歯ブラシがついていたのでそれはやめとけって言っといた)

かなり機械キカイしたものを先に見せたけど、一応まだシンプルだなって感じのものもあります

たくさん見せてもらった中で、私が純粋に欲しいと思ったのがこれ!
大きな貝殻を海岸から拾ってきて作ったシンプルな鉢。

ゴチャゴチャしてないけど、存在感があっていいなって思った。ぜんぶ本物の貝殻だよこれ!大きさすごいよね。

おっちゃん、これなんで売らないの?!
おっちゃん
・・・・・。
売りたくないとか?手放したくないの?
おっちゃん
いや、そんなわけじゃない。欲しい人がいたらぜんぜん売りますよ
え、じゃあ例えばこれだったらいくらで売る?
おっちゃんが一番気に入ってる「三重塔」

 

おっちゃん
う〜ん、結構手間かかってるからなぁ・・・
1万円ぐらい?
おっちゃん
そうだね。1万円以上だったらいいですよ。
え!そんなんでいいの!?売りなよ!!!!絶対欲しい人いるって!鉢植えって結構高いじゃん?!しかもこんな奇抜なやつ、なかなか探せないもん。
おっちゃん
前に、ニューヨークだったら30万円以上で売れるって言われたこともありますよ。
うん、だと思うよ。でもそれだったら、このへんのシンプルなのもありつつ、ゴテゴテカラフル系もっと作ったほうがいいかも!
おっちゃん
最近はもう時間がとれなくって、、、全然できてないんですよ。
・・・・・。

時間がないのは皆んな同じだ。
70代のおっちゃんの時間と30代の私の時間。
その重さや価値は違うかもしれない。
でもみんなの時間はなにをしていても平等に流れていく。
だからこそ、もっとうまく立ち回りながら生きていく術をおっちゃんには知って欲しくてたまらなくなった。
私だって不器用で損してる事多いけど、、、おっちゃんは私の1000倍不器用だ。

おっちゃんは、咲かないアーティスト。

引退して余生を楽しんでいるのであれば、「老後のいい趣味だね!」って笑えたんだろうな。

技術職においては才能もスキルもあり、好きな事だから没頭しすぎて自分で気付いていないだろうけど努力もしていて、大量の時間を費やしてきたのに、、、
日の目を見ていないおっちゃんの会社経営と、この奇怪なたくさんの作品を見て、私は自分の人生と突き合わせもながらも、色んなことを考えるきっかけになった。
おっちゃんへの心配。そして、自分自身ーーー。

私だったら、おっちゃんのこの作品を全部撮影してWEBサイトを作り、それなりにイイ感じで販売することだってできるけど、、、
ここで立ち止まって、その作業に「自分の時間を割く」という決断はしなかった。
代わりにできることで、この記事を書こうと思った。
少しでもおっちゃんの作品が世の中に広まればと思って。些細なお手伝い。

たとえ、WEBサイトを作ってあげたとしても、本人が第一にそれに興味を持って愛情を込めてメンテナンスしていかなきゃ、その後なんの意味も持たなくなる。

それに、おっちゃんがそれを「本当に」臨んでいれば、きっと自分でせっせとやる人だと言うことも知ってる。

要は自分で腹をくくってやろうとしない限り、私の手伝いや心配は「ただのお節介」。無駄になるだけ。

 

それでも、私はおっちゃんに健康で、あまり無理せず、効率よく生きる方法を知ってほしいと強く強く思っている。

自転車操業なんてもうやめてさ。

不要なものは思い切って全部断ち切ってさ。

自分の体をもっと一番に大事にしてさ。

周りの話やセカイにもっと耳と心を傾けてさ。

心から深呼吸してほしいなって。

自分で作品集を作っているおっちゃん。いつか出版したいと思いながら、ずるずる時が流れている。
全作品の名前、テーマ、制作背景、使用素材、加工方法をイラストと写真付きで細かく書いてある。
辞典ぐらい分厚いおっちゃんの作品集

 

おっちゃん、雨マシになってきたから、今のうちに行くわ。
おっちゃん
ああ、ほんとだね。
色々きつく言ってごめんね。
おっちゃん
ぜんぜんですよ。
それと、ありがとう。お世話になりました!とにかく元気でいてね。

おっちゃんの右手と左手をそれぞれ取り、ぎゅっと力を込めて握手したあと、事務所を出た。

「また遊びにきてね」

「うん」

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